温泉と仕事で整うワーケーション 四万温泉
年間136日ワーケーションしてきたネクストモードの社長がワーケーションの体験をリアルに伝えます
1.群馬県 四万温泉
WINEをこよなく愛するネクストモードの里見です。
- 群馬県 四万温泉
- SPA GUEST HOUSE LULUD
- 温泉だけじゃない過ごし方
- ゴルフ接待よりもワーケーションで出会いを
昨年は年間で136日のワーケーションを自費でやってきましたが、まだまだ行ったことがない県が多く、泊まったことがない場所として群馬を選びました(青:ワーケーションした場所、緑:ワーケーション予定)。たまには温泉に入りながらワーケーションをするのもいいのではと考え、群馬のなかでも四万温泉を選んでみました。
旧い街並みが残っている情緒ある温泉街で、『千と千尋の神隠し』のモデルのひとつと言われる積善館(日本最古の湯宿建築)をはじめ、木造の趣ある旅館がずらりと並んでいます。35件ある宿泊施設のうち50以上の客室を持つ旅館は3件のみで、こぢんまりとした経営をする宿が多いです。商魂たくましい観光地が苦手なので、アットホームな雰囲気で誠実なお店が多いのは過ごしやすかったです。
古くは湯治場として栄えたようで、四万温泉は四万(よんまん)の病を癒す霊泉」に由来するとの説があり、飲むと胃腸に良いとも言われているようです。街のあちこちに無料で温泉が飲める場所があります。毎日お酒を飲んでいたのですが、温泉を飲んだおかげか調子が良かったです。
いまでは珍しいスマートボールができる柳屋遊技場(上部写真)があり、のんびりと過ごしたい方には向いています。夜は閉まっているお店が多いため、素泊まりで行く際は食事の予約をした方がいいと思います。
無料で利用できる温泉施設が3つあり、なかでも日向見薬師堂左手すぐにある「御夢想の湯」(上部写真)は訪れる人が少なくて穴場です。最も上流に位置するため、すこしアクセスが悪いですが、写真が撮れるぐらい人が少ないです。湯船は2~3人入ればいっぱいになる広さで、誰も来ないので独り占めすることができました。湯の温度は少しだけ高く感じましたが、窓を開けると目の前に日向見川が流れていて、露天風呂のような解放感があります。洗い場はないので、温泉をカジュアルに楽しむのに向いている施設だと思います。
四万温泉の人は家にお風呂がない人も多いようで、肌がツルツルでした。実年齢よりも若く見えるのは、温泉のおかげかもしれません。
2.SPA GUEST HOUSE LULUD
今回、泊めていただいたのはSPA GUEST HOUSE LULUDです。旧い旅館をリノベーションしたオープンしたゲストハウスで、ワーケーションの設備が整っているのが特徴です。プロジェクターのレンタルや会議室としての利用も相談できるとのことです。
到着してすぐに打ち合わせがあったので、1Fにあるカフェ(下部写真)を使わせてもらいました。Wi-Fiの速度は問題なく、快適に作業ができました。次の日の昼にローストビーフ丼を食べましたが、ボリュームがあり美味しかったです。
今回はドミトリーに泊まりましたが、ベッドの横にデスクがあり、仕切られた個室のようなスペースなのでセキュリティを確保しながら仕事ができます。価格も他の四万温泉の旅館と比べて抑えられていて、HafHで利用することもできるため、長期滞在に向いています。24時間自由に温泉に入れるので、仕事で夜遅くなっても安心して源泉かけ流しの露天風呂で疲れを癒せます。
自分はどちらかというと、自宅にいると会社のことが心配になって、何かしら仕事をしてしまうのですが、強制的に仕事がやめられるのがワーケーションのいいところだと思っています。ワーカーホリックでダラダラと仕事をしてしまう自分には、メリハリの為にも必用だと感じています。今回は四万温泉に2泊しかしなかったのですが、もっとゆっくりと過ごして、目の前の仕事だけではなく、じっくりと中長期的な会社の姿を考えてみたいと思いました。
キッチンスペースにはIHコンロや冷蔵庫の他、BALMUDAが3台(オーブンレンジ、トースター、ポット:下部写真)置かれていて、フカフカのトーストを焼くことができます。ワーケーションでは打ち合わせが立て込んでご飯を食べ損ねることがありますが、キッチンスペースの横にカップラーメンが売っているため急場がしのげるのがありがたいです。
他の宿泊者との交流スペースにもなっているようで、今回は20代前半の男女3人が団らんしていました。四万温泉で働いている3人は、口を揃えて東京は嫌だと言います。
「学生時代の就職活動で、リクナビ、マイナビを使いたくなかった。お金よりもやりたいことがやりたいので、東京で働く気はない。いまの四万温泉での職場は日本仕事百貨で楽しそうだったので決めました。」
どうしたら職場でお客様に喜んでもらえるか、楽しそうに語る姿は、見ていて清々しかったです。地方だからこそ、自分らしさが発揮できるのかもしれません。
1階の受付奥には、中之条ビエンナーレで展示されたこともあるアート作品(下部写真)がひっそりと移設されていました。かなり大型のオブジェで、美しくライトアップされています。アートのある空間でビジネスのアイディアを出し合えば、また違った発想が生まれてくるかもしれません。
3.温泉だけじゃない過ごし方
温泉街の周りには、登れる山がたくさんあり、次の日は2時間ほどかけて水晶山(下部写真)に中井地区登山ルートから登りました(ゆずりは方面からの登山ルートは夏でも遭難者がでる迷い道なので行かないようにしましょう)。雪が降った後でしたが、中級程度の登山経験のある人であれば、軽アイゼン等の装備を備えて登れると思います(あくまで雪山は自己責任で)。熊の出没情報が多いようで、熊鈴があると安心です。夏は小学生でも登れる山なので、ハイキングがてら行くと、頂上に見晴らし台があり、素晴らしい眺望です。群馬と言えば、谷川岳のような本格的な冬山がありますが、四万温泉はそこまで雪深い地域ではないため、温泉と登山をセットにして過ごすのも良いかと思います。
北に少し足を延ばせば、四万ブルーで有名な奥四万湖(下部写真)があります。ダムから眺める景色は壮大で、車でアクセスすることができます。
約4キロの周遊コースがあり、美しい湖の水面を目の前で眺めることができます。今回は雪の後だったため登山の服装(登山靴、ゲイター、冬山用のズボン、登山用フリース、等)で周りましたが、スニーカーで歩いている勇者もいました。道はわかりやすいのですが、天候が変わると危険なため、冬場はしっかりとした登山の準備(ライト、エマージェンシーシート、非常食、等)をして自己責任で入ってください。春と秋が最も青が濃くなるようで、またその季節に行ってみたいと思います。
4.ゴルフ接待よりもワーケーションで出会いを
ワーケーション先では、できるだけ地元の方と交流したいと思っています。単なる観光ではなく、その場所で仕事をしながら地域の人と触れ合って、同じものを食べて、同じ課題が共有できれば、人生の幅が広がります。今回は四万温泉協会事務局長の宮崎博行さん、中之条町企画政策課の田村光規さん、中之条町議会議員の佐藤力也さんと話をさせていただきました。
温泉街としての四万温泉は昭和53年ぐらいがピークで50万人/年の観光客がいたようです。いまでは約半分の25万人/年ですが、四万温泉はいい意味で独特の風情を持っています。
群馬の温泉街で有名な伊香保や水上は、廃業した大型の旅館が廃墟になっている姿を目にしますが、四万温泉にはうち崩れた建物がほとんどありません。団体客を見込んだ大型の資本があまり入ってこなかった点が良かったようで、いまでも個人で移住してくる人たちの支援をメインで行っています。あくまでも自分たちの町は自分たちで盛り上げていこうという気持ちが、街を美しく保つコツなのかもしれません。
10月8日には湯前神社に感謝する地元のお祭りがあり、細い路地を山車が2台、お囃子と共に曳かれます。お祭りのために数週間かけて練習する八木節という踊りが、UターンやIターンで引っ越してきた移住者が地域のコミュニティに参加するキッカケとなっているようです。
お土産にいただいた楓月堂の温泉饅頭(上部写真)は、帰ってから蒸して食べましたが、黒糖がとろけて美味しかったです。温泉饅頭は重曹を入れて膨らませているため、夏は温度が高く膨らみにくいため多めに重曹を入れることになり、春と秋が最も美味しいことを教えてもらいました。
登山、お祭り、四万ブルー、滝、いろんな魅力がある四万温泉。温泉宿を拠点に会社の幹部で合宿をしたり、お客様とプロジェクトの検討をしたり、いろんな使い方がありそうです。人との出会い方のニューノーマルは、ワーケーションにヒントがあるかもしれない、そんなことを考えさせる思い出づくりが四万温泉でたくさんできました。東京での飲み会やゴルフ接待もいいのですが、これからはワーケーションで密を避けてビジネスの出会いを求めるのがトレンドになるかもしれません。モノを所有することから、コトを体験することへ消費者のマインドが変わっていますが、温泉に入りながら田舎を体験することで、商談相手とのチームビルディングが自然と形成されてパートナーとしてのシンパシーが深まるのではないでしょうか。ワーケーションを会社のお金ではなく、お互いに自費で参加するコミット感が、新しいビジネスの関係を持ってみようという信頼感に繋がっていくのかもしれません。接待という言葉にある出会いの嘘っぽさを、共に身銭を切るワーケーションで本気の関係に変えていくことができれば素晴らしいと思います。
四万温泉は東京からも近いので、次回は複数人でワーケーションしたいと思います。